日本代表MF中村俊輔(30=セルティック)が「伝説の一撃」でW杯出場権を引き寄せる。28日のW杯アジア最終予選バーレーン戦(埼玉)に備え、千葉合宿3日目の26日、約40分間の「居残り特打」を実施。05年6月のコンフェデレーションズ杯ブラジル戦(ドイツ・ケルン)で決めた反転ミドル弾を再現するため、約25メートルの距離から打ち込んだ。守備を固める相手から確実に得点を奪う必殺技を磨き、チーム全体に勝ち点3獲得へのメッセージを送った。
何度も左足を振り抜くうちに、4年前の「あの感覚」がジワジワとよみがえってきた。中村俊はバーレーンの3バックを想定して壁役の人形を並べると、たった1人でゴールを狙った。「横にパスを回して少しでもスペースが空けば、一瞬で体を反転させ、前を向いて打つ」。スタッフから出されたパスを足元で受け、振り向きざまにシュート。いつものように回転は利かせず、弾丸ライナーのミドル弾でネットを揺らした。
ヒントは、世界に衝撃を与えた一撃にあった。05年コンフェデ杯1次リーグのブラジル戦。日本は中村俊の約27メートル弾で2-2引き分けに持ち込んだ。セットプレーから横パスをつないでマークをかく乱し、最後は精度の高いミドルシュート。「ブラジル戦のときみたいなね。あの感覚が大事。自分のイメージがあるから」。王国を慌てさせたゴールへの方程式は、アウェーで守備を固めてくるであろうバーレーンにも通用すると考えた。
欧州から帰国し、前日25日に合流したばかり。疲労が蓄積する中で約40分間、ミドルシュート31本、FK34本を黙々と蹴り込んだのは、もう1つ理由がある。「ボールを回したり、ワンツーパスはみんなできている。でも、最後の崩すところで個人がリスクを負う責任を持たないと」。
2月11日のオーストラリア戦は引き分けを狙った相手の術中にはまり、試合を支配しながら得点できず、ホーム戦2戦連続ドロー。アジア杯予選を含めて2勝2敗の対バーレーン戦も、すべて1点差勝負と気が抜けない。負けを恐れ、腰が引けた戦いになりかねないだけに「ゴールを奪って勝ち点3を取る」姿勢を、居残り練習でチームメートに伝えたかった。
勝てば、他会場の結果次第でW杯切符に「王手」がかかる。「パスを回しつつ、2列目がシュートに行く」。名門セルティック移籍への評価を勝ち取った4年前の一撃をたずさえ、大一番のゴールに照準を合わせた。
俊輔は日本代表の頼れる大黒柱だ。精神的支柱の活躍が今の日本には必要だ。そう、WBCでイチローが最後に価千金のタイムリーヒットを打ったように。
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